概要
聞き書きとは、話し手の言葉を録音し、一字一句すべてを書き起こして、ひとつの文章にまとめる手法で、仕上がった文章からは、話し手の語り口や人柄が浮かび上がり、「聞き書き」を通して、地域に住んでいる人たちの持つ知恵や技、その生き様やものの考え方を学び、受けとめることができます1。
岩手県立大学総合政策学部では令和4年7月8日、豊岡地区の住民に、開拓当時の歴史について聞き書きを実施しました。大学生と対象者1対1or2による対話を録音・記録しました。ただ住民の話を聞くだけでなく、豊岡地区の歴史を表すような写真や地図といった資料を用意し、人や風景、建造物について大学生が質問しました。この活動は広報誌にも取り上げていただきました2。聞き書き実施後、開拓の歴史を後世につなごうと、豊岡地区の歩みを紹介する絵本「この場所なあに?」を作成し、豊岡地区のほか、岩手町の小学校、公民館へ合わせて50冊を寄付しました。


また、令和5年12月8日に岩手町役場にて報告会が開かれ、佐々木光司町長らに絵本を紹介しました。豊岡地区自治振興会の北構(きたがまえ)政美会長(72)は「大変ありがたい。これからも形に残り、地域の宝になる」と感謝しました。3 12月11日には岩手県庁にて達増知事を表敬訪問。絵本を作成した学生、指導にあたった役重眞喜子総合政策学部准教授、岩手教育総合研究所の佐藤所長が出席し、絵本製作の経緯などを説明しました。絵本の寄贈を受けた達増知事は「歴史は生身の人間一人ひとりのもので、それが集まって地域の歴史になる。その歴史の原点に触れることができたのでは」「素晴らしい取り組み。これからも地域の歴史を学び続けてほしい」と学生たちの活動に理解を示しました。参加した学生からは、「インターネットでは分からない、地域の人からしか聞くことができない貴重な話。自分たちの聞き書きが紙芝居、絵本という形でさらに広まって残っていけば」「私たちには想像もできないご苦労があった。ぜひ語り継ぎたいと思った」と実感を込めた。
絵本「この場所なあに?」は、岩手町に住む小学生のさくらちゃんが、帰り道に出会った不思議な猫の案内で、豊岡地区の歩みについて知るストーリーで、引き揚げ当時、小学生だった80歳代の住民4人の話が土台になっている。入植した人たちが一からつくり上げた地域であることや、現在はゲートボール場になっている旧豊岡小ができる前は「青空教室」として外で授業を受けていたことなどが紹介されている。近年の誘致企業の操業などこれからの豊岡地区についても展望している。
絵本はA4判で税込み880円。岩手県内の主な書店で扱っているほか、盛岡出版コミュニティーのサイトからも購入できます。益金は、豊岡地区と県立大学生の共同活動の費用に寄付する予定。4 5
記録
実施した聞き書きの記録を掲示します。また、参加者の一部コメントを紹介します。
- 住民の方の反応
- 昔のことを思い出す機会がないからいいと思う
- また聞き書きをやってもいいと思う
- 今後も若者が聞き書きだけではなく、豊岡地区に継続的に来てほしいけど、年齢的に参加することが困難になってくると思う
- 参加した大学生の感想
- 自分たちだけが豊岡の暮らしや開拓の話を聞けたのはもったいない。多くの人に発信、共有して残していくことが大切だと思った
- 聞き書きの実施時間1時間では話したりなかった。また豊岡に行ってお話を聞きたいと思った
出典